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■三菱鉛筆 ファントム パイロット万年筆の摩擦熱で文字が消えるボールペン「フリクション」がヒット商品となって、「ビズ」、「ライト」、「いろえんぴつ」、「ポイント04」と商品の幅を広げている。その成功を見て、遅れを挽回しようと３月下旬に三菱鉛筆が摩擦で消えるボールペン「ファントム」を発売した。 早速「ファントム」を手に入れて使ってみた。「フリクション」と比較すると、残念なことにインクの濃度が薄いこと、きれいに消えないといった、基本的な機能で劣っていた。「ファントム」が「フリクション」よりも優れているのは、字消しがキャップでできることだろう。 一番の問題は、インクの色が復活する温度が零度前後と高いことだ。零度といえば、空調の効いたオフィスでは起こらないかもしれないが、首都圏でも冬の屋外では当たり前に発生する温度だろう。書類をバッグに入れたまま、自動車の中に夜間に放置しておくと消したはずの文字が復活してしまうという笑えないことが起こる。試しに字を消した紙を、冷蔵庫のチルド室に入れて置いたら文字が復活してしまった。フリクションはチルドの温度では文字は消えたままだった。 発売時期を春先にしたのは、低温の冬を避けたのではないかと勘ぐってしまうのはきたきつねだけだろうか。 三菱鉛筆としては、筆記具の有力ブランドとしての意地を見せたということになるのかもしれないが、未熟な製品の発売はメーカーとユーザーどちらにとっても不幸なことではないだろうか。 （文具と事務機 2010年5月号掲載） |